【外国人社員のホンネ】Zさん(製造業界×自動運転テストエンジニア×パキスタン・クス―ル)

  • 2020-1-15

外国人社員は、なぜ日本で働くのか?何を喜びとして感じ、何に不満を抱いているのか?
外国人留学生の就職支援や外国人社員の転職支援に携わり続けてきたソーシャライズが今日も”ホンネ”に切り込みます!

外国人社員のホンネ

※画像はイメージです。

ーー簡単な自己紹介をお願いします。

Z 2014年にパキスタンの大学を卒業して来日しました。その後、約1年1か月ぐらい日本語学校で勉強して、卒業後2016年5月から日本企業で働いています。でももう2回転職しているので今は3つ目の会社です。

ーー現在どんなお仕事をしていますか?

Z 現在の会社ではテストエンジニアとして自動運転支援システムの開発をしています。この企業は外資系企業なのですが、前にいた会社は日系企業で、そこでも同じことをやっていたんですが、ルールが必要以上に厳しく、社風が合わずに2年でやめました。

ーーやめた理由を詳しく教えてください。

Z 日本企業には日本企業特有の文化があると思います。
それは、日本人にとっては普通の習慣でも外国人にとってはかなり不慣れなところがあるんですね。

私の前の職場にはヨーロッパ諸国、パキスタン、インドなど様々な国の人がいましたが、社内の文化は日本的でした。

例えば、私がパソコンで作業をしているときチームリーダーがやってきて何をしているか聞かれたので、「調べ物をしている」と答えたら、「ここは職場で調べたり勉強したりするために来ているのではない、仕事をしに来ているんだからただ仕事だけに集中しろ」といわれました。

そこで私が「わからないことがある時はどうすればいいのですか」と聞いたら、「わからないことは先輩か上司に聞け、それでもだめならマニュアルをみろ。Googleなんかでは調べるな」といわれました。

その時は「本気で言っているのか」と思いとてもショックでした。
そのチームリーダーは59歳の方で自分と世代のギャップがあるにしろ、まさか仕事の調べ物を禁止されるなんて思いませんでした。しかも、日本を代表する世界的に有名な会社だったので、なおさら驚きは大きかったです。

ーー今の会社はどんな雰囲気の会社ですか?

Z 今の会社はイギリスの会社で社風もより自由です。
日本人社員も柔軟な考え方の人が多いです。
時間も分単位で注意されるほど厳しくないし、フレックスタイム制も導入していて、ルール的にもそれほど厳しくないので最近はとても楽です。

この前、日本人の同僚と話していたところ、「この会社をもし辞めたらどこに行けばいいのかわからない。この会社が無理ならほかの会社でも駄目だろう。」と話していました。

その理由を聞いたところ、「この会社で働くまでは他の会社で働くことを考えたこともなかったが、実際に働いてみて”典型的な”日本企業で働くのは難しいと思った。」と言っていました。

彼はいわゆる「社長出勤」をしていて、11時とか12時とかに出社して、退社は20時とか21時とか。私たちの会社には厳しい規則などもないし、もちろん仕事に関する調べものをネットですることもできます(笑)
事業の貢献になるのであれば、新しいテクノロジーを試すことも許可されていました。

システムを作るという作業はとても難しいですが、その分、自分自身の挑戦と成長も増えるので、とてもおもしろいです。

正直な話、日本で働き始めたころはとてもきつかったので、こんなふうになれるとは夢にも思っていませんでした。ただ、日本は労働環境は厳しいけれども、住む環境は良いので、今後も働き続けたいと思っています。

ーー同じ業界・職種にて日系企業と外資企業の両方で働いてみて感じたことをもっと詳しく教えてください。

Z 今の会社でいえば、社員は日本人外国人どちらもいますが、会社のルールやシステム自体はヨーロッパ式なのでとても働きやすいです。

あまり自分で考えることをせず、ルールに従って動く人は日系企業のほうが向いているのではないかなと思います。反対にルールがそこまで厳しくない環境で、自分で考えて行動し、結果を求める人は外資系のほうが向いてると思います。

日系企業は、目的や成果よりもルールに従って行動しているかが重視されており、外資企業はプロセスよりも目的や成果を重視しているようです。また、言葉や文化の違いに対する姿勢にも大きな差があると感じています。

私が以前働いていた日系企業では、日常的な会話は問題ありませんでしたが、技術的な専門用語の日本語が難しかったです。そして、その”言葉”を知らないというだけで、能力やスキル不足という評価をしてきました。

英語ならすぐに理解できて、任された仕事を処理することができます。ただ日本語は知らないだけです。そういうとき、厳しく注意されることが多々ありました。

ーーどのように注意されたのですか?

例えば、「これは小学生レベルの知識だ、大学で何を勉強してきたのか?」とか。

私がパキスタンの学校で勉強したり、大学で研究したりしたとき、技術的な専門用語は英語を使っていたんですね。これはインドやヨーロッパなんかでもおなじことで。

例えば、パキスタンでもインドでもヨーロッパでも英語のresistanceはresistanceなんですよ。
でも日本に来たとたん、それは「抵抗値」になる。全部日本語に翻訳されて日常的に使われているんですよね。

小さいころから技術的な専門用語はずっと英語でおぼえてきたのに、日本に来るとそれを表す日本語を知らないから、私は小学生レベルになります(笑)
この場合で言えば、「resistance」はわかるのに「抵抗値」といわれると何のことだかわからなくなってしまい、「抵抗値って何ですか?」と聞くと「抵抗値も知らないの?小学生レベルの知識だよ?」というふうに言われてしまう。

相手の知らないことの一部分だけ指摘して、能力がないという評価を下すのは不当だと思いました。私は大学院も出ているし、仕事の経験もあります。このようなことは異文化の環境では当然にしておこることなのに、その日系企業はあまりにも閉鎖的過ぎると思いました。友人や後輩にも絶対勧めません。

ーーそういうこといわれてイラっとしたことないんですか?

当然します(笑)

ーーそういう時はどうするんですか?反論するんですか?

Z 働き始めたときはパワハラなどに対する知識がなく謝るしかなかったんですが、転職相談のときにソーシャライズのNさんに会って、このことを相談したときにパワハラについて教えてもらいました。
法律が書かれた紙をもらって、内容を確認したところ自分は謝る必要がなかったことを知りました。それを知ってからは気持ち的に強くなりましたね。

Nさんには「もしまた同じようなことがあれば、ハラスメント対策の窓口やほかの上司に相談したほうがいい」ということを言われました。

その後、また何回か同じようなことがあったので、会社のパワハラ相談窓口に連絡したところ、相談担当の人からヒアリングを受け、その1か月後には上司やチームリーダに向けて対応があり、状況は改善されました。

外国人は日本の労働に関する法律をよく知らないので、一部の人間はそれを利用して不当な対応をしてくることもあります。

日本人みんながというわけではないでしょうが、考え方が堅く、外国人につらく当たってくる人が他国よりも多い気がします。
そういう人はパワハラなどのルールをよく知らない傾向にあるのか、不適切な態度をとったときに周囲の人から嫌われたり、クビになったりする恐れを持つことがないみたいです。

Nさんのように親切に教えてくれる人もいますが、立場を利用して人を傷つけるような発言をしてくる人も残念ながら実際にいて、私自身も会社に「差別されている」ということを何回も訴えました。

相談する前は本当にストレスを多く抱えていて、日本の会社を辞めて母国に帰りたいと本気で思っていたし、日本人はひどいとさえ思っていました。

ーー辛かったですね。その他には何か嫌な体験をしましたか?

前に働いていた日系会社のルールだと、情報漏洩防止のためにカメラ付きの携帯は持ち込みが禁止されていたんですね。
入社してから1か月ほどは、私もきちんと始業前にロッカーに入れていたんですが、他の社員は普通にカメラ付きの携帯を仕事場に持ち込んでいたんです。

私には携帯を持ち込んではいけない、使ってはいけないと注意するのに、周りの日本人社員は当たり前のようにそういったものを持ち込んで電話やメッセージをしていました。

それを見てから、私も携帯をもって仕事場に行きました。

ある日、家族から電話がかかってきたので、電話に出たんです。そしたら、なんで携帯を持ってきているんですか?ときつく責められました。
私は「みんな持ってきているから、許されていると思って持ってきてしまった」と答えたところ、「他の人は先輩だから問題ないんだ」と言ってきました。

「会社のルールは先輩後輩かかわらず、みんな同じではないのか?」と聞いたところ、その時は何も言われなかったのですが、その日から仕事場に入るとき毎回「携帯はどこですか?」と聞かれるようになりました。

私は本当は鞄の中に携帯が入っているのに「ロッカーにあります」と嘘をついたんですね。

その理由は、業務中に携帯を使いたいということではなく、携帯についての対応が差別的だと感じたから、その小さな反抗なんですね(笑)

結局、その経緯をパワハラの相談窓口に相談したところ、全員に対して持ち込み禁止が厳しく取り締まられるようになりました。

ーー結構、職場のトラブルって多いんですね。まだ他にも何かありますか?

Z この話もその日系企業で起こったことなんですが、パソコンの検索履歴をチェックされたことですかね。
私がパソコンに向かって作業していたところ「何をしているんだ」と上司に突然言われて、「検索履歴を見せろ」と言われました。検索履歴自体はすべて仕事関係のものだったのに、その上司はその履歴を一つずつクリックしていって、細かくいろいろ質問してきました。

それは私にとってはかなりのストレスだったので、「もうこの会社を辞めよう」と思いました。最終判断を下す前にNさんと夜ご飯を食べながら相談したのですが、「さすがに酷すぎるから新しい仕事探す方がいいと思う。」と言ってもらって、やはりこの会社を辞めようと思いました。

私の経験からすると、日本では新しく入った社員だと、仕事の経験があったとしても信頼されないです。信頼されないというか、まともな仕事を任されないといった印象を受けました。

最初はコピーを取るとか、ちょっとした翻訳をするとか、そういった雑用ばかりでした。でも、これは不思議なことに新しく入った他の日本人社員にはおこらなかったんですね。なんとなく私は外国人だから信用されていないというふうに感じました。

自分が「~をしましょうか?」というふうに提案しても「いや、これは君がやってはいけない」と言われて。会社側は私に給料を払っているのに、ちゃんとした仕事を任せないというおかしな状態でした。

正直なところ、Nさんに相談できていなかったら、今頃パキスタンに帰っていたと思います。はじめは日本語も日本の法律や習慣もよくわからず大変でしたが、今はいろんなことを知ったので、同じ問題で悩むことはないと思います。大人になりました。

ーー何回か就職に失敗をして、現在良い職場に出会えたZさんですが、日本でいい会社を見つけるポイントは何だと思いますか?

Z  一番の基本は、やはり日本語能力をつけることですね、それがないと日本で仕事を得るのは本当にとても難しいです。

日本では、技術的なスキルがあまりなくても日本人社員ときちんとコミュニケーションがとれれば何とかなるし、チャンスも来ます。

実際に私の経験でも、入社当初は自分が持っている知識やスキルを仕事で全くといっていいほど使いませんでした。

あと、任された仕事をやり遂げる自信が100%ある時は受ける、でも50%ぐらいの自信の場合は受けないほうがいいと思います。

私が学校で少し勉強したことのあるソフトウェアを使う仕事を頼まれたとき、私は「そのソフトウェアを使うことができます」と言ったんですね。そしたら上司は「私はこのソフトウェアのことならなんでもできる」という風に解釈しました。

その結果、非常に難しい仕事を頼まれて、結局やり遂げることができなかったんです。それで、「なんでできないの?」と聞かれて、「そこまでのレベルではない」と答えたところ、私の履歴書を持ってきました。

そのソフトウェアが使えるってここに書いてありますよね?と言われて、私の目の前で履歴書のその箇所を消されました。

だから、完璧にできないのであれば、無理に挑戦はせず、素直にできないと言ったほうが良いです。できないことは周りがサポートしてくれるので。

反対に、できると言ったのにできないことがあると、ほかのこともできない人と思われてしまいます。就職活動のときは、自分の良いところを一生懸命話したくなりますが、日本人に対しては控えめに言う方が良い気がします。

 

いかがでしたでしょうか?Zさんのように職場で居心地の悪さや不満を持つ外国人社員は少なくありません。弊社がそういった相談を受けてきて感じることは、どちらが正しいかどうかを決めることが重要なのではなく、採用の時点でも、入社準備の時点でも、入社後でも、お互いにしっかり話し合って、理解と合意を築き上げることができなかったという事実を重く反省すべきだということです。自分たちが「当たり前」と感じていることは、異文化の前ではいとも簡単に崩れ去ります。日々のコミュニケーションから互いを知る努力を続けなければ、人材の多様化は実現できないでしょう。

次回もご期待ください。

外国人雇用に関する綿密な調査と積極的な情報発信を手掛ける新メンバー。『グローバル』や『ダイバーシティ』という単語がメディアを踊る中、外国人を頼れる仲間として雇用する企業・団体が増えていかない現状に課題を感じ、海外で過ごしてきた自身の経験も活かしながら記事を書いています。

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