『働き方改革』とは『採用改革』でもある

日本企業の「働き方」に大きな変革の波が押し寄せています。政府は社員の残業時間に「月60時間」という上限を設ける案を明らかにしました。高度経済成長を支えた「モーレツ」「滅私奉公」やバブル時代の「24時間戦えますか」の称号は今や時代遅れどころか、それにより社員が鬱病や過労死、さらには最近メディアで取り上げられた自殺などになれば、それは間違いなく企業責任となり最悪の場合、逮捕・書類送検にまでなるケースもあります。

今回の「残業制限」の流れを不可避のものとして捉える経営者も少なくありません。某大手サービス業社長は「日本で今後、最も不足する資源は労働力。社員が健康を害することなく働き続けるため生産性を向上させたい」と回答。某中小製造企業会長は「今でも繁忙期には事務員でも検品作業を手伝うなど社員同士でカバーする工夫をしているが、残業上限60時間が導入されたら、そうした工夫の応用と適正な社員の採用をしていく」と語っています。さらに大手化学メーカー会長はこう答えています。「指示を受けると、日本人社員は『徹夜でもやります』と答えるが、ヨーロッパの社員は『徹夜しないでもやれる方法』を考える。残業の『量』で頑張るのではなく、仕事の『質』で頑張ることがポイントでしょう。そのためにはヨーロッパ企業のように多国籍の社員から構成された組織を作り、多様性を高め、新しい視点、合理的な視点を大切にしていかなければなりません。日本人だけの組織だと短絡的に『量』に入る傾向が強いですね」。

 残業規制について、日本企業はかつてない岐路に立っています。今後、最も不足する資源は『人』であるのは間違いないと思います。人が足りないから、どうしても在籍している社員の残業が増えるという悪循環を断たなければ、この「働き方改革」はただのスローガンとなり、日本企業の生産性は相変わらず上がらず、社員の精神、肉体両面の健康問題は改善されないと思います。 

一方、好きだから、面白いから働くという社員がいるのも事実です。特に独創的な分野の仕事をしている社員の多い企業のトップの受け止め方はもう少し複雑です。「研究職など創造的な部分が多くを占める仕事の場合は、土日も関係なく仕事に没頭することがある。すべての残業を否定して裁量労働的な部分がなくなると、グローバルでの競争力が問われる時代に、厳しいという思いもある」。

 どちらにしろ、もう一度企業の人事担当者は「日本人が一番」「日本人しか採用しない」というマインドを捨て、適正な社員数を獲得するために、グローバル競争に勝つために、多様性からイノベーションを生み出すために、外国人材(留学生・高度人材)の採用・育成を本格的に考える必要性があります。ポスト2020は、①外国人材採用手法 ②外国人社員育成手法などのノウハウの蓄積を早めに取り組んだ企業がますます強くなるのではないでしょうか。