“優秀さ”の罠

外国人材を採用するときの基準として、“優秀さ”が良く言及されます。“優秀さ”というのはネイティブみたいな日本語力であったり、論理的思考力であったり、実際の仕事のスキルだったりなど、入社後に任せる仕事内容によってその内容は異なるはずです。しかしながら、中々に便利な言葉なので、採用したい人材の条件として“優秀な”の一言で片付けられているケースがしばしばあります。

 日本人の採用と異なり、外国人の採用はまだ一般的であるとはいえません。そのため、どのような基準で採用を進めていけば良いかがいまひとつ分からないかもしれません。外国人・留学生の強みは外国語が使えることや出身国の文化・地理に詳しいことなど専門的能力ばかりではありません。基礎的かつ広範的な能力も備えています。

例えば、“結果を出す姿勢”が挙げられます。留学生の多くは大学や専門学校などの学校に毎日通う一方、アルバイトをして自らの生活費を生み出す必要があります。毎朝3時に起きて朝刊を配り、終わり次第学校に行って授業を受け、今度は夕刊を配ってから食事、勉強、就寝するような人たちもいます。私の知人には、アルバイトで自らの生活費と母国にいる家族の生活費を合わせて稼ぐ一方、学校の勉強、自宅での勉強、自治体が運営する日本語教室での勉強に真剣に取り組み、優秀な成績を修めて奨学金を獲得した人もいます。留学生にとっての成功は、家族全員の経済的な幸福に直結する場合が多くいるので、結果を出すため真面目に頑張る人間が多いのです。

また、“精神面の強さ”も挙げられます。自分の専攻を学ぶだけでなく、母国とは異なる文化・慣習に従った生活、言語も考え方も異なる日本人との交流など、慣れない環境の中で対処すべき問題が同時にたくさん襲い掛かります。時には自身のことで悩むこともありますし、家族と衝突することもあります。あまりのプレッシャーとストレスのため、途中で妥協してしまう人も少なくありませんが、最後までやり抜いた人物は、最近の日本人には少ない確かなメンタルタフネスと苦難を乗り越えつつ進んでゆくというハングリー精神を身につけます。

こういった大切だけれども測定しづらい(見えづらい)能力は、日本人採用の場合と違って何故か無視されがちです。実際は、そのポイントこそ注目すべき外国人材の強みであり、今後のビジネスに必須なスキルであるにも拘らずです。“優秀な”という曖昧な言葉のみの採用基準は廃し、5年後、10年後の事業成長に必要な人材要件を今一度整理し、スクリーニングによって母数を削っていく日本型採用ではなく、真に有益な採用活動を果たして行きましょう。